「偉大なるキャンドル市民」

公式の行事のたびに文在寅韓国大統領がロウソクデモで前大統領を辞任に追い込んだ韓国民を、おだててきた言葉だ。2018年の上半期、この言葉の呼びかけは魔法の言葉のように韓国の多くの人々を魅了した。

この言葉を演壇上で発することにより、人類共通の「善」を行うがゆえの「快楽」である「自己肯定感」を聴衆に注入して、国民の間に「正義は行われた」という情緒的達成感を満ち溢れさせた。

 

「そもそも、前大統領に法律上の非があったのだろうか」と言う立憲上の疑問は彼らの中にはなかった。

「デモで政権を倒すという方法は民主的なのだろうか」国民主権の法治主義国なら当然の、その疑問もなかっただろう。

 

「偉大なキャンドル市民」が成し遂げたのは「情緒的正義」であり、得られたのは「情緒的達成感」だったのではなかろうか。

韓国の憲法では「大統領は内乱又は外患の罪を犯した場合を除いて在任中に刑事上の訴追を受けない(第84条)」にも拘らず、朴槿恵氏は「世論に背を押された」憲法裁判所よって有罪とされた。憲法の守護者である憲法裁判所が憲法を裏切ったのだ。憲法条文をどう読んでも内乱や外患に該当しえない「大統領の地位と権限の濫用」を理由にして、憲法裁判所は朴槿恵を大統領職から罷免し、同時に大韓民国の立憲主義を法治主義を否定し葬った。

その結果誕生した文在寅政権は、過去の政権時代に積もった弊害、つまり不正、そして不公正な社会構造を清算するという「積弊清算」を旗印に司法秩序に介入した。そして、国際法上の取り決めに従い多国間の取決めや約束を履行するという当たり前のことを、あえて無視し「従北民族主義」に基づく反日史観を基礎に「改革と統合を成し遂げる」という目的にのみむかって疾走してきた。それはある意味、理の当然であったともいえる。

そうするように韓国民が文在寅に託したと言ってよい。

もし、誕生した文政権が立憲主義的な司法秩序を厳粛に維持し、国際法上の取り決めに従い国際的な約束を履行するという当たり前の政権であったなら、「偉大なキャンドル市民」の情緒的正義を裏切り続けることになっていたのだろう。特に慰安婦問題の日韓合意について、それが言えるのだろう。文在寅政権誕生当時はそちらのほうがはるかに重大な問題だったのだから。

そう、従北政権である文在寅は「偉大なキャンドル市民」の怒りの灯を消してはならなかった。

そして、その灯の火は、憎んでも憎みきれない親日大統領であった朴槿恵による慰安婦問題の日韓合意を燃やし尽くさねばならなかった。火消など論外である。つまり、日韓合意をそのまま進めるような政策、そのような態度が「政権として正しい」のだと国民に知られてしまえば、せっかく「偉大なキャンドル市民」の怒りの灯火を業火にまで育て上げ、憲法の明文も民主主義もその業火の中で都合よく溶解させて作り上げた従北政権が瓦解してしまう。文政権の正統性を完全否定してしまうことだろう。

しかし、無理が祟ったのだろう。

日本政府が2019年の7月1日に、大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについてと言う題目で、大韓民国向けの輸出について厳格に(外国為替及び外国貿易法に基づく)輸出管理制度の運用を適用すると発表すると、文在寅政権も韓国世論も動揺は隠せなかった。「偉大なキャンドル市民」の影が消えてしまってどこにも見当たらなくなったようだ。

もともとが、「偉大なキャンドル市民」は、従北勢力が作り出した幻なのだ。ソウルの道路に大勢繰り出した実在の人々が幻なのではない。従北勢力の「正義=積弊清算」に用いるための「偉大なキャンドル市民」、「従北民族主義」「主体主義」による「統合」を実現させるための「偉大なキャンドル市民」が幻影と言っているのだ。

 

韓国民が真に偉大な市民になりたいのなら、

①「偉大なキャンドル市民」が「賢明な選挙民」に変わり、

②韓国内の司法秩序を厳粛に維持し、

③外交合意事項を着実に実施する責任ある政府を選出すべきだ。

さもなければ、韓国は情治国家のままであり大衆感情の赴くまま無政府国家であり続けるだろう。そして、外交においても国民の委託を請けるどころか、一挙一動に慰安婦婆さんや従北勢力である挺対協一派の承認を必要とする「信用に足らない」政府であり続けるだろう。

④すぐに親米・親日(韓国で言う親日ではない)政権でないにしても、北朝鮮に操られる組織団体が世論や政策に悪影響を及ぼし続けるような社会を脱皮して欲しい。

私は、日本国内で共産勢力との内戦などと言う事態はまっぴら御免だ。

万が一にも、半島が中共の手に渡り日本海側に軍港が出来る事態となれば列島の日本海側全体が自由陣営の最前線と化す。経済負担も馬鹿にならない。半島には自由と民主主義を奉じる政権が絶対に必要だ。

「断交」は日韓国民の共通の敵を利するだけ。

〇できるだけ早期に(親日米政権が)無理だろうと何だろうと必要。

〇日本人と朝鮮人、台湾人、チャイナ人は一蓮托生だ。文句を言いながらも、お互いの文化と歴史を尊重し合って生きるしかない。滅ぼし滅ぼされるという選択肢があると本気で考える悪魔がいるなら別だが、そんな考えを持つ者を想定して策を考えねばならない事態が迫っているとは思えない。

〇 韓国はもちろん、日米も「半島を(共産勢力に)手放すつもりがない」というメッセージ(を世界に明確に発信すること)が必要だ。

韓国は賢明な選挙民が支える真の国民国家に脱皮すべきだ。