李容濬(イ・ヨンジュン)元外交部次官補。
韓国の「ベトナム参戦」謝罪にベトナムは未来に悪影響を及ぼすと抗議
粛然さを超えて恐怖を感じさせる
2次大戦までほとんどが植民地
まだ賠償要求国は韓国だけ
これからは現在と未来に集中すべき

どの国であれ、心に深く秘めた辛い過去史がある。 それを表出するやり方はそれぞれ違う。 悲劇的な歴史の強度ででいえば最も悲しい国がベトナムだ。 そのベトナムと韓国の間に’韓国軍のベトナム良民虐殺疑惑’という過去史問題が20年前、ある国内のマスコミによって浮上した。 あいにくにも6・25戦争当時に発生した米軍の老斤里(ノグンリ)民間人虐殺疑惑が国内的に世間を騒がせた時だった。 そのため韓国政府は問題の早期解決のため、「共同調査後に謝罪と補償をする用意がある」という非常に前向きな立場をベトナムに伝えた。 ところが、意外にもベトナム政府は「過去についてのいかなる議論にも反対し、過去を問わず未来のために協力しよう」という断固たる立場を伝えてきた。

その翌年、韓国·ベトナム首脳会談を控え、ベトナム政府は会談で過去の歴史問題を一切言及しないでほしいと要請してきた。 しかし、韓国の大統領は首脳会談の際、「徳談」(祝福の言葉)の次元でベトナム戦争参戦に対する謝罪の意を表明した。 すると、ベトナム外交部は強い不快感を伝えてきた。 「ベトナムは韓国と友達になろうとしているのに、韓国政府はなぜそれほど過去史にこだわるのか理解できない」ということだった。 (中国の)漢国に征服されて1000年間、中国の支配を受け、1945年以降、フランス、日本、米国、中国との戦争で人口の10%の800万国民を失ったベトナムの毅然とした態度は粛然さを越え、恐怖さえ感じた。

世の中には歴史的に「睨みあった」国が多い。 王政時代から数多くの戦争をした数百年の宿敵ドイツとフランス、英国とフランスが代表的だ。 しかし今、彼らはNATO(北大西洋条約機構)と欧州連合(EU)の傘の下で親密な隣人となっている。 地球上には植民統治を受けた国も数えきれないほど多い。 当時は、国力を養って他国を侵略し、領土を奪ったり植民地化することは、すべての国家の当然の権利と見なされた。 第2次世界大戦が終わるまでその、国際法も侵略行為や植民地統治を不法と規定しなかった。 軍隊を動員して隣国を征服することも合法であり、銃刀で署名した合併条約や領土割譲条約などもすべて合法だった。

そのために第2次世界大戦以前には大多数の国が欧州の植民地だった。 アジアで完全な独立国というのは日本とタイくらいしかなかった。 欧州や米州大陸を除けば、現存する多くの国家は2次世界大戦後初めて独立国になった。 しかし、それから70年が経った今でも植民統治に対する謝罪と補償を要求し、これによって、現在と未来に向けた協力まで放棄する国が韓国のほかにもあるという話は聞いたことがない。

ドイツはたくさん謝罪したのに、日本は謝罪に消極的だという言葉も空しい。 ドイツの謝罪は、戦争期間に発生したユダヤ人と外国人の大量虐殺に対するもので、侵略行為に対する謝罪には極めて消極的だった。 ドイツの欧州侵攻はローマ帝国やナポレオンの欧州征服と同様、当時としては国家の正当な主権行為であったからだ。 欧州諸国がアジア、中東、アフリカを征服して植民地として支配し、数千万人の現地人が犠牲となったが、英国、フランス、ドイツ、オランダ、スペインなどどの国も謝罪せず、被害国もたいてい謝罪と補償を要求しなかった。

今、韓国と日本は国際協定と政府間の合意で一段落した謝罪と賠償に加え、韓国が追加で提起した要求事項をめぐり、関係が極度に悪化した。 それに伴う韓国の日韓軍事情報保護協定(GSOMIA=ジソミア)の廃棄で、韓国の国家安保の中枢である韓米同盟と韓米日三角安保協力まで深刻な危機に追い込まれている。 このように、終わりのない謝罪と賠償要求を通じて、私たちが得ようとするものは何であり、得られるものは何か? それが本当に韓国の国家安保や現在と未来の経済的繁栄よりも重要だろうか。

もう9ヵ月後には、日韓併合110年、解放75年だ。 遅い感があるが、我々ももはや過去の歴史の川を渡って未来に向かわなければならない時だ。 ウィンストン チャーチルが「歴史を忘れた国家に未来はない」と言った時、それは決して過去の歴史の恨みにとらわれるという意味ではなかった。 栄えある歴史に対する自負心を持ち、恥ずかしい歴史では「教訓」を得て、二度と恥辱を繰り返さない富強な国を作らなければならないという当為を説いたものだった。

文化日報
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