2008年当時、米空軍欧州・アフリカ司令官のロジャー・ブラッドレー空軍大将がオランダのフォルケル空軍基地で行われたB61戦術核弾頭訓練を見ている。米国はドイツやオランダなどNATO5カ国と核共有協定を締結した。これを受け、有事の際、米国と合意すればNATO5カ国もこの核弾頭を使用できる。韓国でも米国と核共有協定を締結して北朝鮮の核の脅威に対抗すべきだという意見が増えている。[写真 米空軍]

「米国がパリを守るためにニューヨークをあきらめるだろうか」。フランス大統領だったシャルル・ドゴールが1957年に残した有名な言葉だ。ソ連がフランスを攻撃する時、米国が自国の安全のためにフランスを守らない可能性をドゴールは憂慮した。米国の核の傘を信頼できないフランスは秘密裏に進行中だった核開発を加速させ、独自の核武装の道を進んだ。

いま一部の韓国人が約60年前のドゴールと同じ質問を投げかけている。ドゴールの発言のパリをソウルに、ニューヨークをロサンゼルスに置き換えている。2017年に北朝鮮が開発した大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星15の射程距離が米国の西海岸に達するという事実が試験発射で立証されたため、そのような質問は仮想でなく現実となった。「米国優先主義」を前に出して「同盟は簡単(Alliance is easy)」と話すトランプ大統領の言動もそのような人の数を増やした。ロサンゼルスをグアムやハワイに置き換えても同じだと彼らは考える。

核の傘を100%信頼することはできないという一部の韓国人の結論は、ドゴールがそうであったように核武装論につながる。韓国の独自核武装論はかなり以前から存在していた。元祖は秘密裏に独自核開発を推進して米国に制止され、夢をあきらめた朴正熙(パク・ジョンヒ)元大統領だ。今でも依然として独自核開発を主張する人たちがいる。北朝鮮の核能力が高度化し、事実上核武装を完成した状況であるため、核武装を急ぐべきということだ。政界では鄭夢準(チョン・モンジュン)ハンナラ党元代表が代表的で、原子核工学者の徐鈞烈(ソ・ギュンリョル)ソウル大教授もそのような主張をする。

20日に研究室で会った徐教授は「試験用プルトニウム弾の完成に3カ月、実戦用のウラン弾とプルトニウム弾を1つずつを完成させるのに6カ月あれば可能だ。最初の核弾頭を作るのに1兆ウォン(約920億円)かかり、その後は費用と時間が大きく減る」と述べた。また「米国が最初の原子爆弾を作る時より、またインド・パキスタン・北朝鮮が核兵器開発に成功した時より、現在の韓国の原子力技術と経済力ははるかに高いため、その気になれば難しいことでない」と話した。米国科学者連盟(FAS)会長を務めたチャールズ・ファーガソン氏は2015年に作成した報告書で「重水炉型の月城(ウォルソン)原発1-4号機の水槽に保管された使用済み核燃料を再処理すれば4330個の核兵器製造が可能なプルトニウムを得ることができる」と分析した。

独自核開発を防ぐ障害は技術以外の要因だ。独自核開発は核拡散防止条約(NPT)脱退とこれによる国連制裁が伴う。貿易依存度が絶対的に高い韓国の経済構造から見ると、核開発は経済破綻につながる自滅の道という反対論が依然として世論の主流だ。徐教授は「国際原子力機関(IAEA)査察官や米中央情報局(CIA)所属要員が私の研究室を訪ねて調査をして行ったことが何度かある」と伝えた。国際社会がどれほど敏感に注目しているかを表している。依然として独自核開発論は少数の声にすぎない。核開発の代償に耐えなければいけないリスクがあまりにも高いからだ。

その代わりに野党や安保専門家の間で相対的に現実性のある案として取り上げられているのが核共有論だ。今年2月のハノイ米朝首脳会談のノーディールに続き、10月のストックホルムでの米朝実務交渉までがノーディールで終わったのを見ながら、最終的に非核化交渉が失敗する場合に備えた「プランB」を準備すべきだという声が高まった。

9月27日の国会の対政府質問がその象徴的な事例だ。元裕哲(ウォン・ユチョル)議員(自由韓国党)は「米朝会談が決裂したり北の核が廃棄ではなく凍結に向かう場合、韓半島(朝鮮半島)非核化会談は失敗したということだ」とし「韓半島非核化会談が失敗すれば、韓米連合軍司令部が核を保有する韓国型核戦略を推進しなければいけない」と主張した。一種の「韓米核共有論」だ。予備役将星のキム・ジュンロ議員(正しい未来党)も「非核化はすでに水の泡となった。(このままだと)非核化ではなく核凍結に向かうことになる。元裕哲議員の主張にほぼ同意する」と述べた。

独自核開発論者の徐鈞烈ソウル大原子核工学科教授は「韓国も3カ月あればプルトニウム弾を作ることができる」と述べた。 オ・ジョンテク記者

核共有はNATO方式をモデルにする。核兵器の使用に対する最終決定権は米国が持つが、管理運用に対する戦略を韓国と米国が共有し、訓練も共にする方式だ。現在、ドイツやイタリアなどNATO加盟国のうち非核国家5カ国に180基の核兵器が配備中という。これらの国は核貯蔵庫のカギまで米国と共有する。柳済昇(リュ・ジェスン)元国防部政策室長は「核兵器が領土内に配備されていない22カ国も米国の核政策および運用協議に参加することを義務化しているという点で、米国の核を共有するとみることができる」とし「我々も核共有態勢の強化を急ぐべきだ」と述べた。国内で時々言及される戦術核再配備も大きく見ると核共有論の範囲に含まれる。1991年に米国は韓国領土に配備していた戦術核をすべて撤収したが、現在まで廃棄されずに残っているものを再搬入してくるのだ。

自由韓国党は先月発表した外交安保政策ビジョンの国民中心平和論で「韓米核共有協定」締結を進めると明らかにした。元裕哲議員ら少数が主張してきた核共有論が党論に格上げされたのだ。安保戦略家の間でも核共有を支持する人は増える傾向だ。柳元室長は「核共有協定の締結は北の核の脅威を実効的に抑止する唯一の代案」とし「金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、核を保有しても使い道はなく体制が不安定になるだけという認識を抱かせることが可能」と話した。

しかしいかなる形式の核武装にも反対する政府の方針は変わらない。対話・交渉による非核化だけが唯一の解決法ということだ。文在寅大統領は2017年5月の訪米を控えて行ったCNNのインタビューで「北の核に対応して自主的に核開発をしたり戦術核を再搬入する考えには同意しない」とし「北の核に我々も核で対抗するという姿勢で対応すれば南北間で平和を維持するのは難しい」と述べた。その方針は今も同じだ。

とはいえ明確なのは、北朝鮮の核能力が完成段階に近づくほど交渉による北朝鮮非核化の成功の可能性は低下し、それに比例して韓国の独自核武装の声がさらに高まるという点だ。非核化のための対話と交渉は最後まで進めると同時に、万が一の場合に備えた「プランB」を準備しておくべきだという主張が説得力を持つ。

中央日報
url:https://news.joins.com/article/23638055?fbclid=iwar1svbu3tggzybtuym-om80fybhobmtvnxusosx1acgwzuop2gcvp1fxrss