ライター:齋藤 拓司

今回の上海滞在中、二人の中国人から香港の状況をそれとなく聞かれた。一人は30代の会計士、もう一人は50代の日系企業現地責任者。二人ともかなりレベルの高い日本語を理解する。

いくら日本語での会話とは言え、そのものズバリではなく、婉曲的な問いになる。こちらも当然、警戒するので答えや解説も慎重になる。急速な中国化で香港市民の生活に影響が出ていること、若い世代の間に将来への絶望感が漂っていること、をやんわりと話すのにとどめた。

いくら情報統制をしても、少しづつ状況は伝わる。彼らは日本のメディアから状況を探っているようだ。

30代の会計士は、おそらく西側世界の価値観を理解しており、香港の状況にも理解と関心を持つ性向であることは、漠然と感じた。しかし、50代の日系企業責任者は、言葉の節々に、かつては先進地域だった香港への嫉妬と、かつては大陸側中国人を見下していた香港人への反発を滲ませていた。この男は北米と日本に10年づつ暮らし(日本の大学を卒業)、国籍はカナダという経歴なのだが、明らかに中共シンパ。中国国籍に戻ろうとしている。

長い外国暮らしの挙句、民族意識と愛国心が強まる部分は自分も多分にそうなので理解できる。しかし、この中国の異常さを異常と感じず、むしろ中国が社会秩序を守り、経済発展を続けるには中国共産党の一党独裁以外に選択肢はない、ウイグル、チベットはもちろん、台湾、沖縄も中国(中華帝国)の支配下に置く必要がある、と本気で思っているようなので、末恐ろしさを感じざるを得ない。

出典:https://www.facebook.com/takuji.saito.5/posts/2285574731523642