戦時中、日本の特攻隊員として戦死した朝鮮青年の慰霊碑を生まれ故郷に建てようとした女優、黒田福美さんの手記『それでも、私はあきらめない』(ワック)の韓国語版がこのほど出版された。

慰霊碑建立が除幕式に押しかけた反日団体によって流れてしまうという、その顛末(てんまつ)を語った本で、韓国の現状を厳しく批判した内容だったため翻訳出版には曲折があった。

韓国では日本の小説が常時ベストセラーになるなど日本の本は数多く翻訳されているが、韓国批判の本はなかなか出版されない。

福美さんの本も当初、翻訳担当の大学教授が途中でおじけづいて降りてしまい、カバー担当のデザイナーにも拒否されるなど苦労した。

周知のように韓国人教授が書いた慰安婦問題の本が出版禁止になり、著者は名誉毀損(きそん)で法廷に立たされるなど、韓国の知的現状は日本が絡むと依然、不自由だ。それでも今回のように現状に挑戦する知的勇気を持った出版人もいるのだ。

実は筆者が昨年出版した『隣国への足跡』(角川書店)も今年、韓国で翻訳されている。福美さんの本もそうだが、韓国人の公式歴史観とは異なる視点で日韓の過去を考えたもので「韓国人にもそれを知ってもらうことが必要だから」といって出版してくれた。大きな声ではないが、そうした志はうれしいではないか。(黒田勝弘)

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