ライター:斎藤拓司(自営業)

お正月のTV番組、変わり者で堅物の自分には全く面白くないのでニュース以外は見なかったが、今晩のNHK BS1「欲望の資本主義」は実に良かった。
利益を生み出す資本がTangible Asset(有形資産)からIntangible Asset(無形資産)に変わったという指摘。デジタル化、インターネット化という言葉で誤魔化されがちだが、90年代以降、富を産む源泉が有形のモノから無形の情報に置き換わったのは間違いない。ネットやPCはそれを補完したに過ぎない。
大学まで出て最初に就職したのが自動車メーカーだったので、自分の場合、結局モノにこだわり、モノこそ経済の基本だと思ってきたが、この思い込みが禍した部分は確かにある。2003年にAppleの株をわずか30万円買っていれば、今や1億3500万円になっていた。GoogleにしてもFacebookにしても似たようなもんだ。いや香港や韓国にわずかな不動産を買っていただけで、その価値は最低4倍か5倍になっていた。
武漢ウイルスのパンデミックと無形資産が富を生み出す構造が相まり、これから極端な経済的格差が生じる可能性が高い。1日千円しか使えない人々と、夕食に一人前5万円以上も払う人に両極化するという意味だ。米国はじめ各国で社会の分断と対立が深まっているのはそういうことだろう。
そういう方向になると思いながらも、果たして毎晩数万円も出して夕食を取る必要があるのか、別の言い方をすれば人間の幸せや満足感はそれだけではあるまいとも思う。人間の幸せとは意外にささやかなもんで、贅沢してもいずれ飽きると体験的に自分は思う。
年収1億円だとか、連日高級料理を堪能しているとか、せっせとネットで発信している人もいるし、自分も実際にそうした人々を知っているが、人それぞれなので好きにすればいいし、そんな人々とは本質的に合わないので関わらねば良い。
世界は何かおかしな方向に行っているようだが、結局は自分にとって幸せとは何か考え、幸せになるために努力することだろう。どんな世界であっても、それが一番大切だ。正月元旦から本当に有益なテレビ番組を見た。