ライター:朱東植(政治家、記者、第3の道編集員)

西岡力著 捏造された、徴用工のいない徴用工問題

所謂「徴用工」問題と関連して韓国に最も広がっている誤解は大きく二つ程度整理できる。 すなわち@戦争中、日本で働いた朝鮮人たちは自分たちの意思とは関係なく強制連行された@非人間的な環境で過酷な強制労働、奴隷労働に苦しんだなどがそれだ。

同書は、当時の日本政府と朝鮮総督府、企業などの資料、そして徴用工自身の発言と記録などをもとに、そのような誤解が根拠のないことを明らかにしている。
きめ細かな人口統計をもとに本書は、1944年9月末「徴用」が実施される以前から、渡航をはじめ民間企業の人材募集と官斡旋などの形で160万人に及ぶ朝鮮人が仕事を求めて日本に渡っており、強制性を帯びた徴用は1944年9月から1945年3月まで6カ月程度にわたって行われたにすぎない、と記している。

2018年10月、韓国最高裁が新日鐵住金を相手にした訴訟で、原告勝訴判決を下したのは、従来の日本内朝鮮人労働者らの実態を巡る理解が全くない状態で下されたものだという指摘だ。 実際、当時の最高裁の原告らは徴用ではなく、募集や官斡旋などで自ら日本に渡って働いた朝鮮人だった。

つまり、徴用工と呼ばれるに値する朝鮮人労働者は相対的に少数であり、それよりはるかに多くの朝鮮人が自分の意思によって望む労働現場で自発的に働いていたということを明らかにしたのだ。

また、徴用によって日本に渡った労働者も厳しい統制の下にいたわけではないと説明する。 当時、日本に渡った朝鮮人労働者たちが日本政府の本来の意図とは違って、炭鉱など厳しい現場から逃げ、より楽に労働できる工場などに簡単に移動したという事実を指摘している。

当時の朝鮮人労働者たちの労働条件も一般的に知られていたものとは異なり、奴隷労働や強制労働という表現とはかけ離れていたことを強調している。 この部分は当時徴用され東洋工業という会社で99式小銃を作る作業を行ったチョン·チュンヘ氏の手記でかなり具体的に描かれている。

工場に初めて行ったときの不安感は、きれいに新しく設けられた宿舎や寝具などに触れながら消えゆき、特に当時の食糧難が深刻だった戦争の状況でも、朝鮮では味わえなかった肉や海産物、果物などを豊富に摂取したという事実を記録した。 さらに、毎日飲み会が行われ、花札などの賭博が日常的だったという証言も出ている。

同じ現場で働く日本の女性労働者たちがとても親切にしてくれたという話、作業現場が張り詰めた緊張感が漂う所ではなく、むしろ男女間の和気あいあいな雰囲気だったという話もある。 チョン·チュンヘさん自身も岡田という、20代前半の若い未亡人と恋愛関係に会ったという。

チョン·チュンヘ氏が働いていた工場の状況が、当時、朝鮮人徴用工が働いていたすべての現場にそのまま適用されると断言することはできない。 しかし、少なくとも当時日本に渡った朝鮮人が一律に強制労働、奴隷労働に苦しめられたという韓国内の認識は、実際の現実とはかなりかけ離れていることは明らかである。

このような事実は、この本の翻訳者である李·ウヨン博士と他の専門家の努力によって、韓国内の右派知識人などを中心にある程度知られていた。 問題はそのような認識がどれほど多くの大衆に早く拡散するかということであった。

本書はそのような事実をより確かな根拠を通じてより具体的に知らせるという長所があるが、そのようなメッセージ自体が全く新しいものではないと見ることができる。

この本でもう少し注意深く見なければならない部分は別にある。 つまり、慰安婦と徴用工さらに、植民地など歴史問題と韓国に対する日本政府と知識人そして日本社会全体の態度と認識が総体的に変わりつつあるということがそれだ。

著者である西岡力氏は自身の本を韓国の知識人、特に右派知識人に多く見てもらいたいと述べており、ほかにも韓国に対する愛情をさまざまな側面から表している。

しかし、はっきり知っておくべきは、本書のメッセージが本質的に日本政府と知識人、市民社会を対象にしているという点である。

そのメッセージは、「@日本の左派知識人が日本を否定し、害悪を及ぼす資料とメッセージを作り、韓国の反日感情に大きな影響を及ぼした@日本政府が、韓国政府や特に左派のでたらめな虚偽メッセージに真っ向から対応し、真実を明らかにできず屈服する態度で一貫した」と要約することができる。

西岡氏は、自分がこのように不当な日韓関係と歴史歪曲に対抗して戦い、そのような戦いが今はかなりの成果を上げているという点を誇らしく話している。

つまり、徴用工裁判をきっかけに日本政府が慰安婦問題の時とは異なり、まずは謝罪して人道的立場から金銭的支援をしていた今までのお詫び外交を拒否して、話さなければならないことは正確に言う’毅然とした’外交政策を取り組んでいるという説明だ。

日本国内の反日マスコミ学者らが事実に反する反日キャンペーン展開–>中国と韓国政府がそれを受けて外交問題化し内政干渉的な要求強要–>日本外交当局が反論せず不当な要求を暴かずに事態悪化–>日本国内外の反日活動家が根拠のない日本非難を国際社会に拡散。 このような悪循環の輪を断ち切る時期が近づいていると西岡氏は判断している。

特に西岡氏が憂慮することは、歴史問題と関連して国際社会の広報戦で日本が一方的に敗北してきたという点だ。 このような問題を克服するために、日本政府と社会のムードが変わらなければならない」と強調する。 広報専門家の養成など、具体的な代案も提示している。

この点は韓国政府、そして知識人社会も深刻に受け止めなければならない点だ。 挺対協など韓国人の反日感情の悪化を目標に活動してきた者たちだけでなく韓国政府と知識人たちも、知らず知らずかこのような事態の悪化を放置を促し、そこで一定の見返りを狙う共犯の姿勢を取ってきたのではないかという判断をするためだ。

これまで韓国政府と知識社会、反日商売市民団体などは慰安婦や徴用工の問題で出口のない戦略を駆使してきた。 日本政府は、無条件に過ちを認めて、無条件に謝罪して、無条件資金を掲げるというとても単純な、しかし、少なくとも今までは不敗の成功神話を書いてきた前提の上で行動してきたのだ。

同書には、そのような時代が終わりつつあるということ、韓国にはそのような好時期は二度と来ないということ、そのようなでたらめな前提に基づいた行動方式を根本的に変えなければならないというメッセージが盛り込まれている。

この本が一応日本社会に向けて出すメッセージを盛り込んでいるが、その中でも韓国人が守るべきメッセージがあるとすれば、まさにそのような反省に対する要求だろう。

韓国がそのような姿勢を変えなければ、過去の成功方程式はむしろ韓国に莫大な負担として圧し掛かるはず。 慰安婦や徴用工裁判で、日本側の主張を無視して、主権免除とは、国際法の常識さえ無視して韓国法廷で勝利すれば、何の意味があるか?

徴用工や慰安婦訴訟の原告らが日本企業や政府の財産を果たして差し押さえできるか? 韓国政府がそのような勇気を見せてほしいが、絶対に可能ではないはず。 よくある表現で内弁慶にすぎず、だんだん国際社会から冷笑的な反応を得るだけだ。

文在寅(ムン・ジェイン)は今年、新年の記者会見で、徴用工の訴訟と関連して、原告側の強制執行として、日本企業の資産が売却されるのは”日韓両国の関係で望ましくない”と発言した。 2018年にでも竹やりを持って玄海灘を渡るかのように勢いづいた姿とは雲泥の差だ。 一言で言って、遅いながらも現実に気付いたようだ。

自縄自縛としか言わざるを得ん。

この本はこれまでの徴用工問題と関連した事実やイシューなどで、大半の紙面を埋めている。 しかし、本書が含んでいる真のメッセージは今後、日本政府と日本社会がこの問題にどのように原則的に対応すべきかについてである。

そのメッセージは、韓国政府と知識人社会、そして安っぽい反日感情で不純な政治目的を達成してきた韓国の左派市民団体が、さらに深く受け止めなければならないだろう。

この本はまた一つ重要な研究課題を投げかけている。 在日朝鮮人が強制連行の被害者だという主張が1960年代以降、日本社会に流布したと指摘し、どのような経過でこのようなでたらめの内容が流布したのかという点も、さらなる研究課題だと指摘したのだ。

朱東植氏

私もその点がすごく気になる。 そのような問題に対する研究結果が本格的に出始めれば、反日と親北朝鮮の追従派が正義だと信じる大多数の韓国人に、文字通り「頭が割れるような」衝撃を与えるかもしれないと想像してみる。

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