◆2回目の梁裕燦・ダレス会談--独島領有の好感触を得る

同年7月13日付の東亜日報によると、この会談後の同年7月12日、韓国政府は、アメリカの国務省に対して新たな覚書を送付しました。
前述の7月9日の梁裕燦・ダレス会談の結果を踏まえてのものか、それ以前に用意されていたものかは判然としませんが、梁大使がダレスに拒否された連合国の中に韓国を含めること、日本が対馬に対する権利を放棄するのほか、、韓日間のすべての条約を無効とすることなど、10 項目からなる要求を盛りこんだ覚書であったようです。

同じころ、アメリカの国務省では、韓国政府が領土条項に盛り込むように新たに求めた独島と波浪島が問題になっていました。ごく基本的な問題です。アメリカ政府は独島と波浪島が、どこにある、どんな島かがわからなかったのです。そこで、国務省極東局の北東アジア部日本課長補佐のフィアリー(Robert Appleton Fearey)は、同省のアドバイザーの地理学者ボグス(Samuel Whittemore Boggs)に調査を依頼。ボグスは、同年7月13日に、日本が独島の領有権を放棄すべきとのメモを提出しました。

韓国の独島研究者の中に、このボグスメモを韓国領有権の根拠にしている人(独島学会など)がいますが、これは間違い。ボグスは7月16日には独島が歴史上かつ行政政上日本の一部である理由を述べて、7月13日付のメモを撤回したからです。

その後、 7 月 22 日付の東亜日報によると、韓国政府は7月18日付でアメリカ国務省に対して、また新たに5項目の要求を行っています。この5項目の要求にも、韓国を戦勝国として認め、韓国を対日講和条約の調印国とすること、日韓間の漁労水域を明白に決定すべきこととともに、対馬・独島・波浪島の韓国領有を盛りこんでいます。
この東亜日報報道が事実とすれば、韓国政府は、やや錯綜した状況にあったとも思わせる史実です。

そして、同年7月19日、第2回目の梁裕燦・ダレス会談が行われました。この会談には、韓国大使館の韓豹頊(ハン・ピョウク、한표욱)一等書記官も参加しました。前回の会談で示された、対日講和条約の米英共同草案に対する話し合いがその名目となったようです。

席上、梁大使らは、韓国政府が対馬の領有要求を取り下げることが回答され、新たに、”独島”と”波浪島(パランド、파랑도、Parangdo)”の要求が提示されました。

これに対して、ダレスは独島およびパラン島2島の位置について梁大使に尋ねました。韓豹頊一等書記官は、これらは日本海にある小島であり、だいたい鬱陵島の近くだと思うと述べたと、アメリカの公文書に記載されています。さらに、ダレスは、これらの島が日本の朝鮮併合前に朝鮮のものであったかどうか尋ねたが、梁大使は「そのとおりである」と答えたとされます。--独島はともかく、鬱陵島近傍という波浪島の位置はデタラメを回答したことになります。

このため、ダレスは「もしそうであれば条約中の日本による韓国領土権放棄に関する適当な箇所にこれらの島を入れることについて、特に問題はない」と述べたといいます。この回答を得た梁大使は、この会談で好感触を得たと考えたたということです。